工事費の坪単価は100万円以内に収まる見込み

 ビルは、賃貸ビルを対象とした米国の環境認証システムLEED-CSで、2番目に位の高いゴールドの格付け取得をめざしている。エネルギー負荷の少ない配棟計画や自転車置き場、シャワー室、雨水再利用などは、LEEDのポイント獲得にも貢献している。

 オフィスには調光機能付きのLED照明を導入し、湿度をコントロールできるデシカント空調を備えて快適性を高めた。ビル建設中の2011年3月には、東日本大震災が発生した。この経験を踏まえて、非常用発電機のオイルタンクの容量を24時間対応に増強している。

 環境性能を数値で表すと、建物の断熱・遮熱性能を示すPAL(パル)低減率が29%、設備の省エネ効率を示すERR(イーアールアール)が35%。いずれも東京都の基準で最高ランクに位置する。CASBEE(キャスビー:建築環境総合性能評価システム)の環境効率を示すBEE値は3.6で、最高のSランクを取得済みだ。

 建設費は非公表だが、本誌の推定では外構工事も含めて80億円前後、延べ床1坪あたりに換算すると90万円強となる。この2年ほどの間に完成した最先端の環境配慮型ビルの多くは坪100万円を超えているから、比較的、安くできたといえるだろう。世界貿易機関 (WTO) の競争入札案件で、当初の発注金額が安く抑えられたこともあるが、つくりこみ過ぎない設計姿勢も低コストに結びついているようだ。

 4月には3階~4階部分のステーションコンファレンス万世橋がオープンする。今夏には隣接するれんが高架橋の商業施設が開業し、ビル周辺は再びにぎわいに包まれることになる。


<ビルの概要>
名称:JR神田万世橋ビル
所在地:千代田区神田須田町1-25
最寄り駅:地下鉄 淡路町駅、小川町駅徒歩3分
面積:土地3272.38m2、延べ床2万8452.32m2、賃貸可能床約1万5500m2、基準階957.50m2
構造:S造(制震)
階数(地上/地下):20/2(5階~20階:オフィス、3階~4階:コンファレンス施設、2階:保育施設)
駐車場:自動車87台、自転車54台、バイク6台
事業主:東日本旅客鉄道
設計:ジェイアール東日本建築設計事務所
施工:戸田建設
運営:ジェイアール東日本ビルディング
工期:2010年6月~2013年1月
工事費:80億円前後(推定)

PAL低減率:28.93%、ERR:35.09%(いずれも計画時の値)
運用段階の1m2あたりエネルギー消費量の予測値:未定
総緑化面積の敷地面積に対する割合:29.59%
CASBEE:Sランク(環境効率を示すBEE値は3.6)
LEED:LEED-CS(テナントビルのコアとシェルが対象)でゴールドの認証取得をめざす