3月15日朝。第24回MIPIM(ミピム)は数えるほどのセッションを残して閉幕を迎えようとしている。昨晩は、午後の焼けるような日差しから一転して大雨が見舞い、ホテルやパーティーに向かう2万人の参加者を混乱させた。初日にはパリの大雪で多くのフライトが欠航し、いくつかのセッションがキャンセルされたのも印象深い。地中海性気候のカンヌにあっては珍しく、天気に振り回された一週間だった。

 ただし、会場の雰囲気はいつになく明るい。1年前のMIPIMではギリシャやスペインのユーロ圏離脱、それに続く欧州経済の大混乱が目の前の危機として語られていた。今でも危機の可能性は完全に消えたわけではないが、昨年9月に欧州安定メカニズム(ESM)が発足したことなどで、少なくとも「ユーロ圏全体ではなく国レベルの問題にスケールダウンした」(大手フランス系ファンドのマネジャー)。米国の財政の壁(Fiscal Cliff)問題が、与野党の妥協でなんとか1月の危機を回避できたことも大きい。

 大手不動産コンサルティング会社DTZが会期中に発表した数字によると、2013年は2530億ユーロが世界の商業用不動産に投資される見込み。このうち630億ユーロがアジアを対象にしているという。欧州では、ローンの流動性の復活が不動産投資の復活を下支えしている。一方で、実体経済の回復を伴わない株高、不動産高に対しては、インフレ台頭への警戒感が各国で高まっている。

 会場を離れる前に、現時点までに得た情報を簡単に記しておく。

■4300人の投資家層を含む2万人が参加。政府系ファンドなどの機関投資家が増加
■物流施設系の出展が大幅増。グリーンビルを中心とした「イノベーション」展示が増加
■ロンドンの投資過熱に警戒感。欧州大陸へと関心が回帰
■年率6%以上の経済成長を見せるトルコのプレゼンスが急激に高まる
■2014年、上海でのMIPIM China開催を決定。香港のMIPIM Asiaは規模縮小して続行

※閉幕後も本連載は続きます。

会場のパレ・デ・フェスティバルから古城を望む

本間 純=仏カンヌ