今回のMIPIMでは、メイン会場脇のヨットハーバー事務所を利用した1000m2の展示スペース、「イノベーションフォーラム」が新たに登場。「Think Smart, Build Value」を標語に、米Cisco Systems、米IBM、三菱電機などの大手企業やベンチャー企業など、12社が最新のテクノロジーや製品を披露した。

 エントランスに飾られたのは、高層建築の未来をテーマにした「Porous city(ポラスシティ)」の模型だ。表参道「GYRE(ジャイル)」を手がけたオランダ人建築家Winy Maas氏の事務所MVRDVと、同国の研究機関The Why Factoryが手がけた作品で、ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展でも好評を得たという。建物の体積の半分を気孔のような吹き抜け空間(ボイド)にすることで光を取り込めるほか、自然換気性能にも優れる。

 会期中は周辺5カ所のホテルロビーのほか、MIPIM会場のオスロ市ブースにPorous cityのレゴブロック模型が展示された。すでに、このコンセプトを採用したDNB NORビルがオスロに完成している。

 フロアの一角を占める会議場では、建築や環境技術に関する多様なプログラムが組まれ、EU(欧州連合)のエネルギー政策責任者、Gunther Oettinger氏が基調講演を行った。世界5か国の建築家によるパネルディスカッション「Architecture and Responsible Innovation」では、木質素材を生かしてモダンながら地域文化に根ざした建築を手がける隈研吾氏が「伝統とイノベーションは共存できる」と語ると、多くの賛同が寄せられた。

 「エンドユーザーが常に新しいテクノロジーを求めている時代にあって、不動産にもハード、ソフト面の多様なソリューションが必要だ。イノベーションフォーラムは、建築、建設関係者のネットワーキングの場となったとともに、投資家の興味を引く試みとなった」と、主催企業Reed MIDEMのMIPIMディレクター、Filippo Rean氏は語っている。

篠田 香子=フリーライター