小さく生んで大きく育てる

――所有と運営を分けるにしても外部のREITに物件を売却し、星野リゾートグループは完全に運営に徹するという方法もあると思いますが、グループとしてREITを立ち上げる意図、あるいは意味はどこにあるのでしょうか。

 星野リゾート・リートは星野リゾートが運営している旅館やホテルに投資するという位置づけを明確にしています。星野リゾートの案件に投資してもらうことは、私たち運営会社のスケールメリットを生み、競争力を増すんです。REITが新しく組み入れる案件だけでなく、いままで投資してきた案件にもプラスに働きます。

 ですから、REITの成長なくして星野リゾートの成長はないと思っていますし、星野リゾートの競争力アップやスケールメリットが効いてくるという構造は、REITにとってもプラスだと思っています。うまい循環で両方の競争力と収益の安定に貢献できるような形を模索していきたいというのが、グループとしてREITを立ち上げた理由です。もちろん組み入れる案件についてはREIT側の判断を最優先にしますし、REITの独立性を維持することは大事だと思います。

――REIT運用もテナントもすべてグループ会社というのは新機軸です。ただ、市場では利益相反を懸念する声もあります。

 これまでいろいろなREITをみてきて、利益相反だとか独立性について語られる割には、エグジットが目的のREIT組成も多い気がしています。REITに物件を組み入れた段階でスポンサー側が利益を上げて、それで終わりなんじゃないですかと。あれが利益相反でなくて、我々が利益相反だと言われるのは疑問です。私たちの場合は、REITに組み入れてもらえる案件をつくり、組み入れてもらってからがスタートです。組み入れたけれどいまひとつの競争力だったとか、よくない案件だったとか、利回りが低かったとなると、次がないわけです。

 REITが成長していくことが我々施設運営会社の成長であり、我々の競争力を高めていくことがREITにとっての安定につながります。こういう関係を物件組み入れからスタートしていくことが、むしろ利益相反ではないケースだと思うんです。組み入れそのものが目的ではないし、組み入れはエグジットではないところがすごく大事なポイントだと思います。

――REIT上場時の150億円という規模が、機関投資家には小さすぎるとの意見もあるようです。もっと大きな規模でやろうという議論なかったのでしょうか。

 それはありましたよ、当然。機関投資家からは流動性の問題とか、様々なことを言われました。僕はファイナンスの専門家ではないので、問題だと言われれば問題なんだろうなとは思いますが、だからといっていろいろなものを入れて規模を大きくすると、本来の目的と違ってきてしまう。「日本の観光が成長するなら、面白いから投資してみようじゃないか」と一般投資家の人たちに思ってもらえるように育てていかなければならないし、そのためには純粋性が大事だと思っています。「いろいろなものが入っていることで安定する」という人がいる一方で、「いろいろなものが入っているから何に投資しているのかわからない」ということもあるわけです。様々な課題はあるのでしょうが、当初の理念というか目的を明確にするうえでも、巡航軌道に乗って安定した競争力を得たものだけを組み入れると、それはどんなに小さくてもいいじゃないかという割り切りをしたんですよね。

 僕は観光立国をめざすうえで、観光が成長市場であり成長産業だということを信じている。そこさえマーケットがしっかりとみてくれれば、あとは我々の運営力によってREITを小さく生んで大きく育てることが可能だと思っています。

(聞き手=三上 一大、菅 健彦)

第2回に続く)