世界の旅行市場が年々拡大するなか、投資家の関心を集めているホテル。今年のMIPIMでは、開設8年目を迎えたH.T.L.(Hotel, Tourism and Leisure)部門の展示が500m2に拡大。アフリカからの初参加組を含む20社あまりがブースを構え、プレゼンやマン・ツー・マンの商談を行った。

 欧州でのホテル投資額は昨年250億ドルで、前年比16%も増加した。その背景には、年間6億人に達する欧州旅行客(域内移動と域外からの流入を含む)が年々4~5%のペースで増加しているのに、ホテル供給は2%増と、伸び続ける需要に追い付かないことが挙げられる。投資家がアセットの多様性を求めていること、運営に専門性が求められ参入者が比較的少ないことなども理由となっている。欧米の投資家が収益性の高いバジェットホテルを、中国や中東の投資家はトロフィーアセットと称されるデラックスホテルへ投資している。

 ホテルに照準を当てたコンファレンスで最も注目されたパネル・ディスカッションが「Why Invest in Hotels?」だ。欧州最大、世界でも5本の指に入る大手ホテルオペレーター、仏Accor(アコー)Groupの社長兼CEO(最高経営責任者)、Sebastien Bazin氏がパネラーとして登場した。

Accor Groupの社長兼CEO、Sebastien Bazin氏が発言(写真:IMAGE & CO / V. DESJARDINS)

 Accorは過去に所有と運営の分離を進め、運営受託の割合を増やしてきた経緯があるが、最近ではその投資部門を強化して積極的に自社保有物件の確保に動いている。「高級ホテルに関しては、顧客サービスだけを重視しがちな支配人に、投資家サイドの視点で収益性をより理解させることが課題だ。所有と運営が別では市場の動きに遅れをとってしまう」とBazin氏は語る。大きなキャッシュフローとキャピタルゲインも魅力だという。

 オーストリアのコンサルティング会社、PKFのAndreas Martin氏によると、ホテル業界ではITとのつきあい方が課題となっている。現場ではスマートフォンを使ったクイックチェックイン・システムの導入や、iPadを用いた業務のペーパーレス化が進む。流通面ではネット代理店を通じた予約獲得により稼働率が好調に推移する一方で、その台頭がホテル独自の顧客囲い込みを進める上で大きな脅威となっている。

 Accorでは、直販サイトのACCOR.comの強化に努めることで、予約の半分以上をそこから獲得している。また、その上でトリップアドバイザーなどの口コミサイトと協力する工夫もしているという。