大臣認定不適合の免震ゴムが使われている建物用途別の物件数。東洋ゴム工業が3月13日と4月21日に公表したものを合わせると計145物件に上る。このほか製造時の検査データがなく、免震ゴムが適合品か不適合品かを判断できない建物が9物件ある(資料:東洋ゴム工業)

 ケネディクス・レジデンシャル投資法人は4月21日、大臣認定の性能評価基準に適合していない東洋ゴム工業製の免震ゴムを使った集合住宅が1物件見つかったと発表した。物件名は非公表。REIT(不動産投資信託)の運用資産で、大臣認定不適合の免震ゴムの使用が判明したのは、大和ハウス・レジデンシャル投資法人が保有する1物件に次いで2件目となる。

 東洋ゴム工業は3月13日、地震時の揺れを減衰する性能が低いなどの不適合の免震ゴムを使った建物が全国に55物件あると公表。さらに同社が1996年以降に販売した免震ゴム全製品を調べた結果、4月21日になって新たに90物件で不適合品の使用が判明した。3月13日時点で不適合が明らかになった高減衰ゴム系の免震ゴムだけでなく、天然ゴム系の免震ゴムや弾性滑り支承なども含まれる。製造時に所定の性能を満たしているかどうかを検査する際、同社の社員が技術的に根拠のない補正をしたり、検査データを恣意的に操作したりしていた。

 今回見つかった90物件のうち、物件名が明らかになっているのは大阪市北区中之島の大阪市中央公会堂や秋田市のNHK秋田放送会館など。90物件のうち集合住宅は49物件で、そのうちの1物件がケネディクス・レジデンシャル投資法人の運用資産となる。

 国土交通省は4月中をめどに、レベル2と呼ばれる震度6強から震度7程度の地震に対して建物が倒壊しないかどうか、各物件の安全性を検証して報告するよう、東洋ゴム工業に指示した。ケネディクス・レジデンシャル投資法人は今後、対象物件の入居者へ説明するとともに、東洋ゴム工業に対して不適合品の無償交換を求めていく方針だ。

建設会社の確保が課題に

 東洋ゴム工業は3月30日、3月13日に公表した55物件全てについて、震度6強から震度7程度の地震で倒壊する恐れはないことを確認したと発表した。さらに、今回の90物件を含む全ての不適合品を、他メーカーの協力も得ながら必要な性能を満たす正規品に取り換える方針を打ち出している。

 ただし、現時点で不適合品の交換作業がスムーズに進むのかどうかは不透明だ。

 3月18日に集合住宅1物件で不適合品が見つかったことを公表した大和ハウス・レジデンシャル投資法人は4月22日、日経不動産マーケット情報の取材に対して「東洋ゴム工業と打ち合わせしたものの、工事のスケジュールはまだ提示されていない」と答えた。正規品の製造が追いついていなかったり、建設会社を確保できていなかったりするのが理由とみられる。

 免震ゴムの交換作業は、既存の建物を油圧ジャッキなどで持ち上げるといった特殊な技術が求められる。しかも、建物を使いながら交換する場合、作業の制約によって工事が長期間にわたる恐れもある。大和ハウス・レジデンシャル投資法人によると、対象物件の新築工事を担当した建設会社は「免震ゴムの交換作業は請け負えない」と話しているという。