ノア・シュレイズ理事長(写真:米不動産カウンセラー協会)
ノア・シュレイズ理事長(写真:米不動産カウンセラー協会)

 米国の不動産カウンセラー協会(The Counselors of Real Estate、略称CRE)は、アジア展開に向けた第一歩として日本の業界団体と提携する。5月20日と21日に開催されるMIPIM(ミピム)Japanの会場で、日本不動産カウンセラー協会(JAREC)との協定に調印する見通しだ。

 1953年に設立されたCREのメンバーは、米国を中心に約1100人。“プロ中のプロ”で組織された業界団体として知られ、10年以上の実務経験に加えて、推薦と過去の実績に対する厳しい考査を経て入会が認められる。ベテラン同士のギルド(職能組合)として機能すると同時に、グローバル企業や政府・自治体が不動産に関する助言やコンサルティングを求める際の窓口としての役割も果たしている。

 会員の属性はファンドマネジャーやデベロッパー、ブローカー、建築士、コンサルタントなど多岐にわたっている。鑑定士のような特定の資格を発行するわけではないが、米国ではメンバーの証である「CRE」の文字を刻んだ名刺に高いプレステージが認められている。米国外の会員も120人強存在するものの、日本人は日本ヴァリュアーズの磯部裕幸代表やシンガポール国立大学の清水千弘教授など4人にとどまる。

 一方のJARECは、日本不動産鑑定協会を母体として1989年に発足した組織を原型とするNPO法人。主には鑑定士で構成されるが弁護士や会計士などの専門家も加わり、それぞれが不動産に関するコンサルティング業務の幅を広げていく狙いで設立された。会員数は約580人だ。米国CREを手本として発足した経緯があるものの、これまで具体的な提携は行われていなかった。

 今回の提携の内容は、両者がMIPIM Japanで開催するパネルディスカッション、「The Role of Counselors/Advisors in Global Real Estate Decision Making(コンサルタント/アドバイザーが不動産業界の国際的意思決定に果たす役割)」で説明される見込み。21日木曜日の午後2時から1時間の予定で、CREのNoah Shlaes(ノア・シュレイズ)理事長、JARECの吉村真行理事長のほか、国土交通省の田村計(はかる)大臣官房審議官などが出席する。

 CREでは、プロ同士が力を合わせることで、国の違いや個々の専門領域を超えてユーザーの問題解決に力を貸している。米不動産会社Newmark Grubb Knight Frankの役員でもあるシュレイズ理事長は、本誌の取材に対して「不動産投資のクロスボーダー化が進行し、米国に閉じた組織では企業などからの相談に対応しきれなくなってきた。欧州では5年かけてメンバーを60人まで増やしており、日本でも近い将来に拠点の設立をめざしたい」と、今回の狙いを説明する。