先行きへの不安が高まっている欧州連合(EU)において、各国の住宅市場と住宅政策の現状を分析し、今後を展望した。EUは、欧州中央銀行(ECB)を中心に金融統合が進められていることからEU全体としての金融危機をイメージしがちだが、通貨統合後も各国の住宅市場や住宅ローン市場は独立に機能している。米国金融危機による同時ショックを受けたとはいえ、各国の財政や住宅市場への影響、それらへの対応策は一様ではない。逆に考えれば、金融機能を含めて完全には統合されていないため、EU諸国の住宅市場が一体的な機能不全に陥って米国を上回る危機の引き金になる、という危険性は低い。