企業が価値創造を続けていく存在である以上、その「器としてのオフィス」の重要性に変化はない――。弊社が刊行した「ワークプレイスが創る会社の未来」(三菱UFJ信託銀行不動産コンサルティング部著)の一節です。昨年春の緊急事態宣言以降、弊社でも在宅勤務が推奨され、オフィスに行く機会がめっきり減りました。通勤がなくなり家族と夕食を共にする時間が生まれる一方で、業務上、不便を感じることも。たまに顔を出すオフィスは、仕事に集中し物事を効率的にこなせる場として良くできていると実感させられます。とはいえコロナ禍が長引くなか、テレワークの浸透によってオフィスを見直す企業がかなりの数に上るもよう。今後、オフィス市況にはどのような影響が表れるのでしょうか。日経不動産マーケット情報2021年4月号は、オフィスビル総合研究所の協力の下、テレワークなどが今後3年間に空室率や賃料に与える影響をシミュレーションしました。ぜひご覧ください。

 足元ではすでに影響が顕在化しています。4月号に掲載した「新築オフィスビルの稼働率」調査によると、今後1年以内に東京で完成する大規模オフィスビルのテナント内定率は65%にとどまりました。前回調査(半年前)の75%からは10ポイント、前々回調査(1年前)の91%からは実に26ポイントの下落です。大規模オフィスではテナント誘致に時間を要するようになっており、賃料への波及が懸念されます。記事では、個別ビルのテナント決定状況をグラフにしています。

 売買レポートは、ヒューリックが取得したリクルートGINZA8ビルや、藤田観光が390億円で売却した大阪の太閤園、三菱地所物流リートが5物件を282億円で取得した事例など、記事28本を収録しました。これらを含む取引事例100件を一覧表にまとめています。2002年の創刊以来の取引データは「ディールサーチ」で提供しています。REITの運用実績データなども収録していますので、トラックレコードをお探しの際はぜひ利用をご検討ください。

 2002年4月に創刊した日経不動産マーケット情報は、間もなく20年目に突入します。創刊当時を振り返ってみると、例えばREIT市場はまだ立ち上がったばかり。いまや公募・私募を合わせて100銘柄に迫ろうという勢いの投資法人は、三つしか上場していませんでした。事業用・投資用不動産の取引情報は今と比べて格段に限られ、小誌はそれをコツコツと足で拾い集めては、日々のニュース発信につなげていきました。月日を重ねること丸19年。金融危機の荒波で部数を大きく落とした時期もありましたが、地道に情報発信を続けた結果、それまで以上のご支持を頂戴できるまでになりました。20年目を迎えるタイミングで、小誌はウェブサイトをリニューアルします。併せて情報発信も強化していく計画です。引き続きご愛顧のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

三上 一大