日本銀行がこのたび公表した3月の短観では、不動産業の景況感は絶好調。金融危機前と同レベルの高い水準を維持しています。不動産売買市場も好調で、2018年1月~3月に日経不動産マーケット情報が取り上げた取引の総額は1兆3001億円に上りました(価格判明分のみ集計)。前年同期比0.5%の増加です。何が好調な市況をけん引したのでしょうか。本誌2018年5月号の売買事例分析で、その背景を解説しました。ただ、ある有力企業の営業担当は「右から左へと売れる物件は目に見えて少なくなっている。これからは不動産会社の優勝劣敗が進む」と言います。誰もがもうかる時代は終わり、実力が試される市場環境に移りつつあります。

 5月号の特集は、南仏カンヌで毎年開催される国際不動産見本市、MIPIM(ミピム)のレポートです。本誌が現地取材を敢行するのはこれが10回目。各国から集まる参加者は昨年比7%増の2万6000人に達し、不動産投資市場の盛り上がりが見て取れます。トランプ政権の誕生や英国のEU離脱といった政治イベントに警戒感が高まっていた一昨年、昨年とは違い、適温経済を背景とした楽観ムードが会場を支配。一方で、市況サイクルに対する漠然とした不安も交錯するという、方向性を見いだしにくい今年のMIPIMとなりました。担当記者はうまくその状況をまとめていますので、ぜひご一読ください。

 四半期に1度、本誌が実施している成約賃料調査の結果も5月号に掲載しました。空前の低空室率にもかかわらず、東京都心のオフィス賃料は緩やかな伸びにとどまってきましたが、今回の調査で、東京駅周辺の大規模ビルにおける成約水準の上限が5万円に到達しました。2009年上期以来、実に9年ぶりのことです。オフィスが圧倒的に品薄な大阪は、今回の調査でも梅田や淀屋橋・本町で賃料が5%以上上昇。新規の供給計画がないなか、当面は高値が続きそうです。

 売買レポートは、関電不動産開発や東京ガス都市開発など7社の企業連合が推定約1500億円で取得した芝パークビルや、かんぽ生命保険が850億円の譲渡益を享受した旧東京サービスセンターの売却、ジャパンリアルエステイト投資法人が505億円で取得したビル2棟など、23ケースを掲載。これらを含む取引115件を一覧表にまとめています。

 なお本誌は5月28日(月)、「202X年、不動産市況を先読みする~テクノロジーとワークスタイルが変える市場構造」と題するセミナーを開催します。市場に精通した専門家を迎え、潮目が迫る不動産市況の先行きを大胆に読み解きます。ふるってご参加ください。

三上 一大