銀座で売り出されているらしい、とある大型ビル。現行賃料に基づくキャップレートは実に1.8%だそうです。「これは極端としても3%を切るのはざら。ファンドでは絶対に投資できないので、銀座と聞いた瞬間に検討の対象から外す」と、某ファンドマネジャーは話します。それだけ銀座の物件価格は高騰しきっており、出口戦略が難しいものになっています。日経不動産マーケット情報2018年11月号の売買レポート冒頭に載せた土地取引は、そのリスクが顕在化した事例。売り主は大きな損失を出す結果となりました。そんな銀座ですが、中央区は同エリアの地区計画を変更することを検討しています。街づくりを誘導するための容積率割り増しについて住宅では廃止し、ホテルは手厚くする方針。今後の市場にどのような影響を与えるのでしょうか。恒例の銀座特集では、取引・賃貸動向とともに、この改正について触れていますので、ぜひご覧ください。

 11月号では、小誌が四半期ごとに実施している売買事例分析も掲載しています。今回は2018年第3四半期(7月~9月)が対象。同期の売買高は、第2四半期の前年割れから一転、再びプラスに回復しました。土地取引が多く、その中には大阪のうめきた2期開発用地(1778億円)をはじめ、大型の案件が散見されます。一方で、オフィスはやや低調となりました。記事では、期間中に判明した大型取引をまとめたほか、個々のオフィスビル取引における推定利回りの算定なども行っています。同じく四半期ごとに実施している成約賃料調査の結果と併せ、今後の市場を見通す材料としてご確認ください。

 売買レポートでは、先に触れた銀座の土地取引や、米ブラックストーンが香港フェニックスから取得した大阪の大型オフィスビル、開発をめぐるトラブルで8年間未入居となっていたオフィスビルの取引など、20事例を掲載。これらを含む取引事例117件を一覧表にまとめました。

 なお、11月16日~17日に「インターナショナル不動産&投資カンファレンス 2018東京」(Property Access主催)が開催されます。一部を除き参加費は無料ですので、海外不動産にご関心をお持ちの方はぜひ足をお運びください。小誌も基調パネルディスカッションなどで協力しています。

三上 一大