3月17日に閉幕した世界最大の不動産コンファレンス、MIPIM(ミピム)。主催者発表によると参加者数は2万4200人で、このうち5000人は投資家と金融機関が占める。ブレクジットをはじめとする政治経済情勢に不安を抱えつつ始まった今年のイベントだが、金融危機以降で最多の参加者を得て、ひとまずは足元の市況の好調さを印象付けた格好だ。

海を望むロシアパビリオンのテラス(写真:本誌)
海を望むロシアパビリオンのテラス(写真:本誌)
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 クッシュマン&ウェークフィールドが会期2日目の15日に発表したレポート「The Great Wall of Money」(→サマリー)によれば、2017年に不動産投資市場に投入される資金はエクイティとデットを合わせて4350億ドル(49兆円)と予想される。2011年以来初の減少ながら、その幅は前年比で2%減にとどまる見込みだ。市場関係者はトランプ政権とブレクジットの行方、そして次なるEU危機の足音に耳をそばだてつつも、厳しい取得、貸出競争の中で努めて強気を維持しようとしている。

 上記のレポートの中で、機関投資家やファンドの投資ターゲットとして米国、中国、英国に次ぐ世界第4位に位置付けられているのが日本だ。公式プログラムだけで100を超えるセッションの中、日本市場をめぐる複数のブログラムが開催された。

 15日の朝に2時間半にわたり開催されたのは、三菱商事系の投資顧問会社であるダイヤモンド・リアルティ・マネジメントの後援による「Japan Breakfast」。同社のほか仏AXA Investment Managers、独Union Investment、シンガポールSC Capital Partners、アジア非上場不動産投資家協会(ANREV)など国際的なスピーカーの顔ぶれが壇上をにぎわせた。

Japan Breakfastの様子。スピーカーはANREVのRegional Director、Jeremy Stewardson氏(写真:S.CHAMPEAUX - IMAGE&CO/MIPIM)
Japan Breakfastの様子。スピーカーはANREVのRegional Director、Jeremy Stewardson氏(写真:S.CHAMPEAUX - IMAGE&CO/MIPIM)
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 また同日午後のパネルディスカッション「How to Approach the Japanese Market?」では、ホテル開発を中心とした日本のツーリズム市場の魅力が討論された。恒例の建築コンテスト「MIPIM Awards」では、未来志向のプロジェクトを対象としたBest Futura Mega Project部門で、三井不動産や日建設計が関わった「柏の葉スマートシティ」が部門賞を受賞した。

パネルディスカッション「How to Approach the Japanese Market?」の様子(写真:S.CHAMPEAUX - IMAGE&CO/MIPIM)
パネルディスカッション「How to Approach the Japanese Market?」の様子(写真:S.CHAMPEAUX - IMAGE&CO/MIPIM)
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木曜日のメインイベント、MIPIM Awards(写真:S. D'HALLOY - IMAGE & CO/MIPIM)
木曜日のメインイベント、MIPIM Awards(写真:S. D'HALLOY - IMAGE & CO/MIPIM)
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 閉幕翌日の18日土曜日、パリは再びテロの騒ぎに見舞われた。シャルル・ド・ゴールに次ぐ第2の交通ハブであるオルリー空港で、テロを企てた男が警備兵に射殺される事件が起きたのだ。ちょうどエールフランス航空のストが予定されていたため、スケジュールを前倒しして難を逃れたMIPIM参加者も多かったが、一部は空港閉鎖の影響を受けたもようだ。

 パリ、ブリュッセル、ニースを襲った連続テロを想起させる今回の事件。華やかなイベントですっかり警戒感が緩んでいた筆者にも、ヨーロッパの危機が去っていないことを思い起こさせた。

本間 純