過去30年分を上回るオフィス供給量に

 虎ノ門エリアは現在、国家戦略特区の指定などを追い風に、森ビル以外にも複数の大規模再開発や建て替え計画が進行している。完成時期はいずれも東京五輪が開催される2020年前後に集中する。

 森ビルによると、虎ノ門エリアでは1986年から2015年までの過去30年間で、累計75万m2のオフィス賃貸床が供給されてきた。今後、2025年までの10年間で、過去30年分を上回る賃貸床が新たに供給される見通しだという。東京23区全体でみると、2019年の1年間で183万m2の大規模オフィスビルが供給されるという調査結果もある。過去約30年間の年平均103万m2を大きく上回る水準だ。竣工は2021年度以降になるが、三菱地所がJR東京駅そばの常盤橋街区で総延べ床面積68万m2のオフィスビルなど計4棟を開発する計画もある。高さ390mで完成すれば日本一となる超高層ビルも含まれる。

三菱地所の常盤橋街区再開発プロジェクト。2021年度から2027年度にかけて竣工する(資料:三菱地所)
三菱地所の常盤橋街区再開発プロジェクト。2021年度から2027年度にかけて竣工する(資料:三菱地所)
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 オフィスの大量供給に見合った需要を喚起できなければ、空室率が上昇し、賃料の下落や不動産市況の悪化を招く恐れがある。限られた内需だけに期待するのは難しく、いかに海外企業などの外需を呼び込めるかに、虎ノ門ヒルズをはじめとする都心の再開発プロジェクトの成否が懸かっている。それはいみじくも、「国際的な経済活動の拠点を形成する」という国家戦略特区の目的にも重なる。


[開発の概要]
開発名:虎ノ門ヒルズビジネスタワー(虎ノ門一丁目地区第一種市街地再開発事業)
所在地:港区虎ノ門1-17ほか(旧住居表示)
最寄り駅:地下鉄銀座線虎ノ門駅徒歩3分
面積:土地1万100m2、延べ床17万3000m2
階数(地上/地下):36/3
構造:S造(一部SRC造、RC造)
事業主:虎ノ門一丁目地区市街地再開発組合(参加組合員:森ビル、西松建設、京阪電気鉄道、東京都市開発)
設計:森ビル
用途:事務所、店舗、ビジネス支援施設、駐車場など
用途地域:商業
容積率:1450%
工期:2017年2月~2019年12月(予定)


開発名:虎ノ門ヒルズレジデンシャルタワー(愛宕山周辺地区(I地区)開発事業)
所在地:港区愛宕1-1ほか(旧住居表示)
最寄り駅:地下鉄日比谷線神谷町駅徒歩6分
面積:土地6530m2、延べ床12万2000m2
階数(地上/地下):56/4
構造:RC造
事業主:森ビル
用途:住宅、店舗、子育て支援施設、スパなど
戸数:約600
用途地域:商業
容積率:1200%
工期:2016年度~2019年度(予定)


開発名:虎ノ門ヒルズステーションタワー(虎ノ門一丁目・二丁目地区市街地再開発事業)
所在地:港区虎ノ門2-6ほか(旧住居表示)
最寄り駅:地下鉄銀座線虎ノ門駅徒歩4分
用途:事務所、ホテルなど
竣工:2022年度(予定)