待機児童問題を解決するための手段の一つとして、国は2017年10月、民間の開発事業者が大規模マンションを建設する際、自治体から保育所設置を要請するよう求める通知を出した。これを受け、保育所整備に関する事前協議を開発事業者に義務付ける条例を制定する自治体が増えている。こうした発想は意義深い。しかし、民間である以上、社会貢献やCSRだけのための協力は困難で、何らかのインセンティブが必要ではないか。保育所併設で購入検討者から「管理が面倒な施設」、もしくは投資家から「リスクの高い商品」だと見なされたら分譲や販売のハードルが上がり、開発事業者は保育所整備を敬遠するだろう。また、保育所は単なるハコではなく、サービスを提供し続ける事業だ。開園後に起きうる騒音や事故、将来の需要縮小など、管理運営の問題について行政として対応を決めておく必要がある。現状では、保育所併設マンションの具体的な方法と内容は、各自治体に委ねられ、円滑な整備運営に向けた仕組み作りは自治体によってまちまちだ。今後、国が待機児童対策の柱として保育所併設マンションを推進するならば、詳細なガイドラインを整備し、自治体の取り組みを後押しする必要があるだろう。