日経不動産マーケット情報が把握した2021年の大型不動産取引を金額順に紹介する。世界的なパンデミックはいまだ終息の兆しを見せないが、大規模物件に対する投資需要は堅調。電通本社ビルのリースバック取引を筆頭に、オフィスビルや物流施設の売買が相次いだ。
1位 電通本社ビル(約2700億円)
電通グループは2021年9月、港区東新橋にある電通本社ビルの売却を決議した。売却価格は2700億円前後になるとみられる。同6月にヒューリックなどのコンソーシアムから購入意向書を受け取り、検討を行っていた。
2位 ESR尼崎ディストリビューションセンターなど(約2384億円)
ESRと投資家の共同投資ファンドは、物流施設4物件をシードポートフォリオとして取得する。資産総額は約2384億円(約21億ドル)だ。このうち最も大きいのはESR尼崎ディストリビューションセンター(DC)で、約1135億円(約10億ドル)。2021年10月に発表した。
3位 ESR市川ディストリビューションセンター(簿価約950億円)

ESRは2021年5月、千葉県にあるESR市川ディストリビューションセンターの出資持分の大半を売却すると発表した。延べ床面積約22万9000m2の物流施設で、物件の簿価は870億ドル強(約950億円)。買い主は英プルーデンシャル系のM&G Real Estate。
ESRの発表(英文、PDF) ※記事は本サイト未掲載
4位 飯田橋グラン・ブルーム(41%)(776億円)
日本ビルファンド投資法人は、総額1530億円の資産入れ替え取引を行った。9月30日に千代田区富士見の飯田橋グラン・ブルームの一部を776億円で取得。一方、4物件を計754億円で売却した。
5位 日本製鉄東日本製鉄所君津地区(東京)の跡地(譲渡益約750億円)
日鉄興和不動産は、板橋区舟渡4丁目に物流施設を建設する。敷地面積は約9万1000m2で、2021年6月取得した。日本製鉄は譲渡価格を明らかにしていないが、約750億円を個別決算の譲渡益として計上した。
6位 日本通運旧本社ビル(732億円)
日本通運は2022年4月、港区東新橋の旧本社ビルを売却する。価格は732億円。買い主は、ベアリングなどの機械加工品事業を手がけるミネベアミツミで、グループの事業拡大を見据え、取得を決めた。
7位 都ホテル 京都八条など8施設(計約600億円)
米ブラックストーン・グループは、近鉄グループホールディングスが保有する八つのホテルに投資した。価格は非公表だが600億円程度とみられる。
8位 Torch Tower(ホテル、ホール)(560億円)
三菱地所と東京センチュリーは3月16日、2027年度に竣工予定のTorch Tower(トーチタワー)について、ホテル区画とホール区画を共同で取得すると発表した。事業の進捗に応じて総額560億円を2社が出資する。
9位 広小路クロスタワー(400億円台後半)
米ベントール・グリーンオークは2021年2月、名古屋市中区の大型オフィスビル、広小路クロスタワーを取得した。売り主は三菱地所のSPC。価格は、隣接する結婚式場と合わせて400億円台後半とみられる。
10位 横浜ブルーアベニュー、新宿フロントタワー(20%)(計約437億円)
シンガポールのキャピタランド・インベストメント(CLI)は日本国内で組成した私募ファンドの運用を開始した。投資対象はCLIが保有していたオフィスビル2棟の持分。取得価格は合わせて437億円だ。
■11位~20位(参考)
- 赤坂スターゲートプラザ(424億2800万円)
【売買】総額632億円の資産入れ替え、日本都市ファンドがヒューリックと
- オリナスモール、オリナスコアなど(420億円強)
【売買】420億円で商業施設を売却、キャピタランド
- ロジポート大阪ベイ(400億円)
【売買】400億円で大阪の大規模施設を取得、ラサールロジポート
- 中野坂上サンブライトツイン(400億円)
【売買】総額1530億円の資産入れ替え、日本ビルファンド
- 太閤園(約390億円)
【売買】大阪・太閤園の買い主は創価学会
- 日本ヒューレット・パッカード本社ビル(388億円)
【売買】HP本社ビル、388億円でシンガポールREITが取得
- 横浜野村ビル(約330億円)
【売買】みなとみらいの大型オフィスを取得、モルガン・スタンレー
- プロロジスパーク猪名川2(330億円)
【売買】577億円で3物件を取得、プロロジスリート
- 神谷町トラストタワー(2フロア)(324億円)
【売買】HISが本社をセール&リースバック、324億円で
- DPL流山III(320億円)
【売買】723億円で4物件を取得、大和ハウスリート
【注】調査時点は2021年12月28日。年初から同日までの間に契約または引渡が実施され、価格等が判明している不動産売買事例のみを紹介した。REITの資産入れ替えや公募増資(PO)を伴う一括売買は物件ごとに個別取引としてカウント