世界の不動産への直接投資額の推移(クリックで拡大表示)
世界の不動産への直接投資額の推移(クリックで拡大表示)

不動産投資市場が世界的に拡大している。2006年の直接投資金額は69兆円に達し、過去最高を記録する見通しだ。アメリカに次いで世界2位の市場規模を誇る日本にも、資金が流れ込んでいる。市場の透明性の向上や潜在的な投資対象不動産の多さが、これを後押しする。投資利回りの低下、金利の上昇といった懸念をはらみつつも、日本の投資市場は拡大を続けている。その様子を4回のシリーズでお伝えする。(三上 一大)

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 1ドルの不動産に対し、3ドルの投資マネーが集まっている――。ジョーンズ ラング ラサール(JLL)は今の不動産市場をこのように分析する。ドイツ銀行グループの不動産投資部門(RREEF)によると過去5年間、不動産投資は目覚ましい成果を上げ、世界的に年10%のトータルリターンを生み出した。こうした実績に加え、REIT(不動産投資信託)のような開かれた不動産投資商品の世界的な広がりも、投資資金の呼び込みにつながっている。

 世界の不動産市場への資金流入は年々、増えている。2006年上半期の投資金額は2900億ドル(33兆3500億円)に達した(上の図参照)。前年同期に比べて30%の伸びを見せており、通年では過去最高の6000億ドル(69兆円)になるだろうとJLLは分析している。これは不動産を直接購入した場合の金額の集計で、REITへの投資などは含まれていない。住宅も集計対象から外れており、これらを含めるとさらに金額が膨らむことになる。

 UBSグローバル・アセット・マネジメントの推計によれば、安定投資が可能な主要国における不動産ストックの価値の合計は、2004年末の6.6兆ドル(760兆円)から2005年末には8兆ドル(920兆円)へと20%以上増えた。

 拡大の背景にあるのは、世界的な投資需要の高まりだ。先進国では高齢化の進展とともに年金の運用資金が増大している。1997年~98年の通貨危機の後、アジア諸国が外貨準備金を増やしたことや、産油国が原油高で潤っていること、さらには世界的に長期金利が低い水準にあって資金調達コストが低いことも、投資マネーの増大に拍車をかけている。「100億円の投資資金が運用後に120億円になると、120億円がそのまま投資に回ってくる。資金が増えるのはありがたいが、消化するのが大変だ」と、ある投資会社の担当者は話している。

(レポートの全文を「日経不動産マーケット情報」2007年1月号に掲載しています)

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