金融商品取引法の主要部分が昨年9月から施行となり、金融サイドからの規制が不動産証券化にも及んでいる。このたび日経BP社では「基礎から学ぶ 不動産実務と金融商品取引法」(田辺信之著/田中俊平監修)を発刊した。金融商品取引法が不動産ビジネスに与える影響を同書籍から抜粋し、5回にわたって解説する。


 アセットマネジメント業務を遂行するために、投資助言・代理業の登録でよいのか、それとも投資運用業の登録が必要なのかに関しては、不動産証券化スキームに応じて、個別に検討する必要があります。

 ここで「投資助言業」というのは、投資顧問契約を締結し、その契約に基づき助言を行う行為のことを指します。投資顧問契約とは、「有価証券の価値など」や「金融商品の価値などの分析に基づく投資判断」について、口頭、文書その他の方法により助言を行うこと、および相手方がそれに対し報酬を支払うことを約束する契約です。一方、「投資運用業」とは、投資一任契約を締結して、金融商品の価値などの分析に基づく投資判断に基づいて、有価証券またはデリバティブ取引にかかわる権利に対する投資として、財産の運用・指図を行うことです。

 例えば、合同会社と匿名組合を利用したGK-TK 型証券化において、特別目的会社(SPC)が自己運用するために投資運用業の登録をすることが困難な場合、SPC は1)アセットマネジャーに投資運用をすべて委託するか、2)適格機関投資家等特例業務の届出をするか、3)2層構造ファンドの特例を活用するかのいずれかの対策をとる必要があります(1~3の詳細については、書籍「基礎から学ぶ 不動産実務と金融商品取引法」で説明しています)。

 金融庁のパブリックコメントでは、アセットマネジャーの業務が投資助言・代理業、投資運用業のいずれにあたるかについて、「実質的な投資判断の一任及び投資権限の委任の有無により、個別事例ごとに実態に即して実質的に判断されるべきもの」とされています。ただし、アセットマネジャーが助言をしているだけであり、SPC が投資判断をしているというためには、少なくともSPC である合同会社や匿名組合出資者等が意思決定しているスキームを構築し、その意思決定過程を記録に残すなどの対応が求められる可能性が高いものと考えられます。


■次回の内容
第5回 プロパティマネジメントへの影響

■前回までの内容
第1回 投資市場のプレーヤーへの影響
第2回 不動産取引と金融取引
第3回 信託受益権の「みなし有価証券」化による影響

この連載は、新刊書籍「基礎から学ぶ 不動産実務と金融商品取引法」(田辺信之著/田中俊平監修)のなかから、著者の了解を得て抜粋または一部を編集したものです。書籍に関する情報は、下記のサイトをご覧ください。